第一章: ヒステリーの悪魔
しばいぬは心理的安全性を都合よく解釈し、責任逃れや自己正当化に利用する人々を憂いていた。
オフィスに、けたたましい声が響き渡った。
「なんですって!?私の意見を却下するんですか!?信じられない!こんなのパワハラです!心理的安全性が確保されてない!」
声の主は、自称デザイナーのバカメッス(仮名)さん。デザインのプレゼン後、上司のチギュ課長から具体的な改善点を指摘された途端、堰を切ったように叫び始めたのだ。
チギュ課長は、冷静に説明を試みた。「バカメッスさんのアイデアは面白い視点もあるのですが、ターゲット層の分析が甘く、実現可能性に疑問が残ります。〇〇の部分をもう少し詰めてみてはどうでしょうか?」
しかし、バカメッスさんは聞く耳を持たない。
周りの社員たちは、いつもの光景にうんざりしていた。バカメッスさんは、自分の意見が少しでも否定されると、すぐに「心理的安全性」を盾にヒステリーを起こすのだ。
かの人にとって「心理的安全性」とは自分の意見は無条件に受け入れられるべき、という都合の良い解釈でしかなかった。
その様子をいつものように犬小屋から見ていたしばいぬは、静かに立ち上がった。
「シバ...」
その一声は、いつものように小さく、しかし、確かな意志を帯びていた。
しばいぬは、バカメッスにゆっくりと歩み寄った。
しばいぬは、バカメッスの目をまっすぐ見つめ、続けた。
「シバ〜(あなたの行動は、心理的安全性という言葉を都合のいい言い訳に使っているだけです。建設的な批判を受け入れず、感情的に反発することは、チームの成長を妨げ他のメンバーの発言を奪うハラスメントに他なりません。)」
バカメッスは、いつものように 「だって...」 と駄々を捏ねようとした
「シバ!!!(汝、感情的な逃避をせず、自己を省みよ!!)」
その声は、オフィス全体に響き渡った。バカメッスはしばいぬの迫力に圧倒され、言葉を失った。
「シバ〜!(心理的安全性は、甘えの温床ではありません。それは、互いを尊重し、建設的な議論を通して成長するためのツールです。心理的安全性を盾に、責任を放棄したり、他人を攻撃したりする行為は断じて許されません!)」
バカメッスは、ようやく自分の行動を恥じた。いあままで都合のいいように心理的安全性を解釈し、周囲を困らせていたことに気づいたのだ。
「ごめんなさい....」
バカメッスは涙ながらに謝罪した。チギュ課長にも、建設的な意見を上げてくれたことに感謝の言葉を述べた。
オフィスは静寂に包まれた、しかしそれは以前のような重苦しいものではなく、希望に満ちたものだった。
心理的安全性を盾に、自己を正当化しようとする悪魔は、これからも姿を変えて現れるだろう。
しかし、しばいぬはそのたびに立ち上がり、真の心理的安全性を守り抜くことを誓ったのだ。
教訓
心理的安全性は、批判なき承認ではなく、互いに尊重し、建設的な議論を通して成長するための道具である。
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